本記事は、以下の書籍を元に OSI 参照モデルのレイヤ1 物理層について説明します。
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OSI 参照モデルやその他のレイヤの解説については以下の記事をご確認ください。
- 【入門】OSI 参照モデル、TCP/IP とは
- 【OSI 参照モデル レイヤ1 物理層】イーサネットとは ←イマココ
- 【OSI 参照モデル レイヤ2 データリンク層】イーサネットとは
- 【OSI 参照モデル レイヤ3 ネットワーク層】IP とは
- 【OSI 参照モデル レイヤ4 トランスポート層】TCP/UDP とは
- 【OSI 参照モデル レイヤ5 セッション層】SSL/TLS とは
- 【OSI 参照モデル レイヤ6 プレゼンテーション層】MIME とは
- 【OSI 参照モデル レイヤ7 アプリケーション層】
物理層・イーサネットとは
物理層とは、ケーブルや信号(電気・光・電波)といったルールを決める層です。
「ケーブルを利用する LAN を有線 LAN」、「電波を利用する LAN を無線 LAN」を言います。
また、「有線 LAN に関するルールを IEEE802.3(イーサネット)」、「無線 LAN に関するルールを IEEE802.11」と言います。
本記事では、有線 LAN の規格 IEEE802.3(イーサネット)に焦点を当てて、物理層を説明します。
イーサネットケーブルの種類
イーサネットで利用するケーブルには次の3種類があります。
- 光ファイバーケーブル
- ツイストペアケーブル
- UTP(Unshielded Twisted Pair)ノイズを遮断するシールド加工無し
- STP(Shielded Twisted Pair)ノイズを遮断するシールド加工有り
- 同軸ケーブル
なお、現在の LAN ケーブルは、UTP ケーブルが主流です。
光ファイバーケーブル | ツイストペアケーブル | 同軸ケーブル | |
---|---|---|---|
画像 | ![]() | ![]() | ![]() |
中身 | ![]() | ![]() | ![]() |
芯線 | 光ファイバー | 銅線(メタルケーブル) | 銅線(メタルケーブル) |
信号 | 光 | 電気 | 電気 |
利用例 | 光ケーブル | LAN ケーブル, 電話線 | テレビケーブル |
電磁ノイズ | 影響無し | 影響大(UTP ケーブル) 影響小(STP ケーブル) | 影響小 |
配線 | 難(ガラスのため脆い) | 易(柔らかくて曲げ易い) | 難(固くて曲げ難い) |
イーサネット規格名
イーサネット規格名は、ケーブルの仕様に合わせて以下のように命名されます。
・旧イーサネット規格名(10BASE2等):<伝送速度><伝送形式><最長距離>
・新イーサネット規格名(1000BASE-T等):<伝送速度><伝送形式>-<ケーブルの種類>
各項目の詳細は以下のとおりです。
伝送速度 | 単位は Mbps, 数字の後にGが付くと Gbps |
伝送形式 | BASE はベースバンド方式(デジタル信号)。現在はこっちだけ BROADブロードバンド方式(アナログ信号) |
最長距離 | 単位は "基本的に" 100m。例外多し (10BASE5だと 500m、1BASE5 だと 250m) |
ケーブルの種類 | 「T」はツイストペアケーブル |
「F」は光ファイバーケーブル | |
「R, W, X」は光ファイバーケーブルが多い ・「S(Short)」距離の短い光マルチモード ・「L(Long)」距離の長い光シングルモードが多い ・「C(Coaxial?)」同軸ケーブル |
例えば、新イーサネット規格名の「1000BASE-T」は以下を表します。
- 伝送速度: 1000 = 1000Mbps
- 伝送形式: BASE = ベースバンド方式
- ケーブルの種類: T = ツイストペアケーブル
イーサネット規格名の一覧
イーサネット規格名の一覧を以下に記載します。
規格名 | 通信速度 | 主な使用ケーブル | 距離 | |
---|---|---|---|---|
1BASE5(旧規格名) | 1Mbps | UTP(2対) | 250m | |
10BASE2(旧規格名) | 10Mbps | 50Ω同軸 (5mm) | 185m | |
10BASE5(旧規格名) | 50Ω同軸 (12mm) | 500m | ||
10BASE-T | UTP (カテゴリ CAT3) | 100m | ||
10BROAD36(旧規格名) | 75Ω同軸 | 3600m | ||
10BASE-F | 10BASE-FB | 光マルチモード | 2000m | |
10BASE-FP | 光マルチモード | 1000m | ||
10BASE-FL | 光マルチモード | 2000m | ||
100BASE-T | 100BASE-TX | 100Mbps | UTP (カテゴリ CAT5) | 100m |
100BASE-T4 | UTP(4対 カテゴリ CAT3) | 100m | ||
100BASE-T2 | UTP(2対 カテゴリ CAT3) | 100m | ||
100BASE-F | 100BASE-FX | 光マルチモード/シングルモード | 2000m/20km | |
1000BASE-T | 1000BASE-T | 1000Mbps | UTP(4対 カテゴリ CAT5e) | 100m |
1000BASE-TX | UTP(4対 カテゴリ CAT6) | 100m | ||
1000BASE-X | 1000BASE-SX | 光マルチモード | 550m | |
1000BASE-LX | 光マルチモード/シングルモード | 550m/5000m | ||
1000BASE-CX | 同軸ケーブル(2芯並行) | 25m | ||
2.5GBASE-T | 2.5Gbps | UTP(4対 カテゴリ CAT5e) | 100m | |
5GBASE-T | 5Gbps | UTP(4対 カテゴリ CAT6) | 100m | |
10GBASE-T | 10Gbps | UTP(4対 カテゴリ CAT6/CAT6a) | 55m/100m | |
10GBASE-R | 10GBASE-SR | 光マルチモード | 300m | |
10GBASE-LR | 光シングルモード | 10km | ||
10GBASE-ER | 光シングルモード | 40km | ||
10GBASE-ZR | 光シングルモード | 40km以上 | ||
10GBASE-W | 10GBASE-SW | 光マルチモード | 300m | |
10GBASE-LW | 光シングルモード | 10km | ||
10GBASE-EW | 光シングルモード | 40km | ||
10GBASE-X | 10GBASE-LX4 | 光シングルモード | 10km | |
10GBASE-CX | 4対2芯銅線 (CX4) 同軸 | 15m | ||
25GBASE-T | 25Gbps | STP(4対 カテゴリ CAT7) | 30m | |
40GBASE-T | 40Gbps | STP(4対 カテゴリ CAT7) | 30m |
LAN ケーブルのカテゴリ
LAN ケーブルで利用するツイストペアケーブルは、イーサネット規格名とは別に、カテゴリと呼ばれる規格でも分類されます。
LAN ケーブル(ツイストペアケーブル)のカテゴリは以下のとおりです。
カテゴリ | 伝送速度 | 伝送周波数帯域 | ノイズシールド | 使用可能距離 |
---|---|---|---|---|
CAT1 | 20kbps | - | UTP | - |
CAT2 | 4Mbps | 1MHz | UTP | - |
CAT3 | 10Mbps | 16MHz | UTP | 100m |
CAT4 | 16Mbps | 20MHz | UTP | 100m |
CAT5 | 100Mbps | 100MHz | UTP | 100m |
CAT5e | 1Gbps | 100MHz | UTP | 100m |
CAT6 | 1Gbps or 10Gbps | 250MHz | UTP | 55m or 100m |
CAT6a | 10Gbps | 500MHz | UTP/STP | 100m |
CAT7 | 10Gbps | 600MHz | STP | 50m |
CAT7a | 40Gbps or 100Gbps | 1000MHz | STP | 15m |
CAT8 | 40Gbps | 2000MHz | STP | 30m |
なお、LAN ケーブルのカテゴリに対応するイーサネット規格名は以下のとおりとなります。
LAN ケーブルのカテゴリ | イーサネット規格名 | ケーブル |
---|---|---|
CAT3 | 10BASE-T | UTP |
CAT5 | 100BASE-TX | UTP |
CAT5e | 100BASE-TX、1000BASE-T | UTP |
CAT6 | 1000BASE-TX、5GBASE-T | UTP |
CAT6a | 10GBASE-T | UTP/STP |
CAT7 | 10GBASE-T, 25GBASE-T | STP |
UTP ケーブルの種類
UTP ケーブルには次の二種類が存在します。
- ストレートケーブル
- クロスケーブル

UTP ケーブルが2種類存在する理由を知るためには、以下の NIC について知る必要があります。
NIC(Network Interface Controller)
NIC とは、ケーブルを接続するための差込口(LAN ポート)を用意するための拡張カードです。

現在のノートパソコンには、最初からマザーボードに差込口(LAN ポート)があるので、NIC で LAN ポートを用意する必要が少ないです。

ノートパソコンに内蔵された LAN ポートの例
NIC の中身は以下のとおり送信機と受信機が分かれています。

右側の LANポートから UTP ケーブルを接続
NIC と NIC をストレートケーブルで接続すると送信機(Tx)で送信したデータが送信機(Tx)に届いてしまうため、データが受信できません。

そこでクロスケーブルを利用して、送信機(Tx)と受信機(Rx)を接続します。

スイッチやハブは送信機(Tx)と受信機(Rx)の位置が逆になっています。そのため、NIC とスイッチやハブはストレートケーブルで接続できます。

なお、送信機(Tx)と受信機(Rx)が分かれている理由は以下のコリジョンを回避するためです。
コリジョン(衝突)
コリジョンとは、信号同士が衝突することです。
コリジョンが発生すると信号の形が変化して、正しいデータが送信できません。

- 同軸ケーブル
- 2つのコンピュータが同時に信号を受信しながら送信できません
- ツイストペアケーブルの場合
- 2つのコンピュータが同時に信号を受信しながら送信できます
- 送信と受信のピンが分かれているため、コリジョンが発生しません
コリジョンドメイン(衝突ドメイン)
コリジョンドメインは、コリジョンが発生する可能性のある範囲のことです。
以下の例ではコリジョンドメイン1のコンピュータが信号を送信した場合、コリジョンドメイン2とはコリジョンが発生しません。

ネットワーク機器(Layer1)
イーサネットの物理層で利用するネットワーク機器は以下の2つです。
- リピータ
- ハブ
リピータ
リピータは以下の機能を持ちます。
・電気信号を「増幅」してケーブルの規格の使用可能距離を伸ばす
・電気信号を「整形」してノイズで崩れた電気信号を元に戻す

後述するハブにリピータの機能が組み込まれてます。
ハブ(別名:リピータハブ、マルチポートリピータ)
ハブはポート(ケーブルの差し込み口)が複数ある機器です。
ハブはリピータの機能に加え、すべての機器に信号を一斉に送信できます。

また、以下のようにハブとハブを繋ぐこと(=カスケード接続)もできます。

なお、カスケード接続は10BASE-Tなら4段、100BASE-Tなら2段までの制約があります。
ネットワーク用語(Layer1)
物理トポロジー
物理トポロジーとは、機器とケーブルの配置のことです。
物理トポロジーは次の5つの種類があります。
イーサネットで利用可能なトポロジーは「バス型トポロジー」と「スター型トポロジー」です。
バス型トポロジー

バス型トポロジーは、同軸ケーブルを利用するトポロジーです。前述したとおり、現在 LAN ケーブルにはツイストペアケーブルを利用するためオワコントポロジーです。
スター型トポロジー

スター型トポロジーは、集線装置(ハブや L2 スイッチ)に複数のノード(コンピュータや L2 スイッチ等)を繋げた現在主流のトポロジーです。
その他のトポロジー
各トポロジーの説明は以下の記事が参考になります。
ファストイーサネット
ファストイーサネットは 100Mbps の通信に対応した規格のことです。
ファストイーサネットの特徴は以下のとおりです。
ギガビットイーサネット
ファストイーサネットは 1Gbps の通信に対応した規格のことです。
家庭で最も普及している1000Base-T の UTP(CAT5e) を使うイーサネットです。
その他のレイヤについて
OSI 参照モデルの1層目の物理層に関する説明は以上となります。
他のレイヤについては以下をご覧ください。
- 【入門】OSI 参照モデル、TCP/IP とは
- 【OSI 参照モデル レイヤ1 物理層】イーサネットとは ←イマココ
- 【OSI 参照モデル レイヤ2 データリンク層】イーサネットとは
- 【OSI 参照モデル レイヤ3 ネットワーク層】IP とは
- 【OSI 参照モデル レイヤ4 トランスポート層】TCP/UDP とは
- 【OSI 参照モデル レイヤ5 セッション層】SSL/TLS とは
- 【OSI 参照モデル レイヤ6 プレゼンテーション層】MIME とは
- 【OSI 参照モデル レイヤ7 アプリケーション層】
参考資料・おすすめの書籍
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