【OSI 参照モデル L1 物理層】【TCP/IP イーサネット】とは

物理層物理層とは、有線・無線/信号 (電気・光・電波) のルールを決める層です。
イーサネット (IEEE 802.3)イーサネットとは、有線 LAN の規格を決める TCP/IP プロトコルスイートの1つです。

ちなみに、無線 LAN の代表的な規格は Wi-Fi (IEEE 802.11) です。

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イーサネットケーブル

本記事では、物理層に相当するイーサネットの仕様について説明します。

イーサネットケーブルの種類

イーサネットで利用するケーブルには、次の3種類があります。

光ファイバーケーブルツイストペアケーブル同軸ケーブル
画像
中身
芯線光ファイバー銅線 (メタルケーブル)銅線 (メタルケーブル)
信号電気電気
利用例光ケーブルLAN ケーブル, 電話線テレビケーブル
電磁ノイズ影響無し影響大: UTP ケーブル
影響小: STP ケーブル
影響小
配線難 (ガラスのため脆い)易 (柔らかく曲げ易い)難 (固くて曲げ難い)
参考: https://www.infraexpert.com/study/ethernet2.html, https://www2.edu.ipa.go.jp/gz/

なお、ツイストペアケーブルには、主に次の2種類が存在します。

  • UTP (Unshielded Twisted Pair): ノイズを遮断するシールド加工無し
  • STP (Shielded Twisted Pair): ノイズを遮断するシールド加工有り

また、現在の LAN ケーブルの主流は、UTP ケーブルです。

UTP ケーブルの種類

UTP ケーブルには次の二種類が存在します。

  • ストレートケーブル
  • クロスケーブル
https://www.infraexpert.com/study/ethernet3.html

UTP ケーブルが2種類存在する理由を知るためには、以下の NIC について知る必要があります。

NIC(Network Interface Controller)

NIC とは、ケーブルを接続する差込口 (LAN ポート) を用意するための拡張カードです。

現在の PC には、最初からマザーボードに差込口 (LAN ポート) があるので、NIC は不要です。
※最近は Wi-Fi が主流なので、有線用の LAN ポートが無い

NIC の詳細

NIC の内部は、送信機と受信機が分かれています。

http://www5e.biglobe.ne.jp/aji/3min/ex/sup01.html
右側の LANポートから UTP ケーブルを接続

クロスケーブルの用途

[NIC] と [NIC] を [UTP のストレートケーブル] で接続すると、送信機(Tx)で送信したデータが送信機(Tx)に届いてしまうため、データが受信できません。

そこでクロスケーブルを利用して、送信機(Tx)と受信機(Rx)を接続します。

ストレートケーブルの用途

スイッチやハブは送信機(Tx)と受信機(Rx)の位置が逆になっています。

そのため、[NIC] と [スイッチやハブ] は [UTP のストレートケーブル] で接続できます。

なお、送信機(Tx)と受信機(Rx)に分かれている理由は、コリジョンを回避するためです。

コリジョン (衝突)

コリジョンとは、信号同士が衝突し、正しくデータが送受信できないことです。
ケーブルコリジョン
同軸ケーブル発生する
ツイストペアケーブル発生しない

ツイストペアケーブルでは、以下の二つの経路を用意することでコリジョンが発生しません。
※全二重通信と呼びます。

イーサネット規格名

イーサネット規格名は、ケーブルの仕様に合わせて以下のように命名されます。

  • 旧イーサネット規格名(10BASE2等):<伝送速度><伝送形式><最長距離>
  • 新イーサネット規格名(1000BASE-T等):<伝送速度><伝送形式>-<ケーブルの種類>

例えば、新イーサネット規格名の「1000BASE-T」は以下を表します。

  • 伝送速度: 1000 = 1000Mbps
  • 伝送形式: BASE = ベースバンド方式
  • ケーブルの種類: T = ツイストペアケーブル

命名規則

命名規則説明
伝送速度単位は Mbps, 数字の後にGが付くと Gbps
伝送形式BASE はベースバンド方式(デジタル信号)。現在はこっちだけ
BROADブロードバンド方式(アナログ信号)
最長距離単位は "基本的に" 100m。10BASE5だと 500m。例外あり
ケーブルの種類「T」はツイストペアケーブル
「F」は光ファイバーケーブル
・「S(Short)」距離の短い光マルチモード
・「L(Long)」距離の長い光シングルモードが多い
・「C(Coaxial?)」同軸ケーブル

イーサネット規格名の一覧

規格名通信速度主な使用ケーブル距離
1BASE5(旧規格名)1MbpsUTP(2対)250m (例外)
10BASE2(旧規格名)10Mbps50Ω同軸 (5mm)185m
10BASE5(旧規格名)50Ω同軸 (12mm)500m
10BASE-TUTP (カテゴリ CAT3)100m
10BROAD36(旧規格名)75Ω同軸3600m
10BASE-F10BASE-FB光マルチモード2000m
10BASE-FP光マルチモード1000m
10BASE-FL光マルチモード2000m
100BASE-T100BASE-TX100MbpsUTP (カテゴリ CAT5)100m
100BASE-T4UTP(4対 カテゴリ CAT3)100m
100BASE-T2UTP(2対 カテゴリ CAT3)100m
100BASE-F100BASE-FX光マルチモード/シングルモード2000m/20km
1000BASE-T1000BASE-T1000MbpsUTP(4対 カテゴリ CAT5e)100m
1000BASE-TXUTP(4対 カテゴリ CAT6)100m
1000BASE-X1000BASE-SX光マルチモード550m
1000BASE-LX光マルチモード/シングルモード550m/5000m
1000BASE-CX同軸ケーブル(2芯並行)25m
2.5GBASE-T2.5GbpsUTP(4対 カテゴリ CAT5e)100m
5GBASE-T5GbpsUTP(4対 カテゴリ CAT6)100m
10GBASE-T10GbpsUTP(4対 カテゴリ CAT6/CAT6a)55m/100m
10GBASE-R10GBASE-SR光マルチモード300m
10GBASE-LR光シングルモード10km
10GBASE-ER光シングルモード40km
10GBASE-ZR光シングルモード40km以上
10GBASE-W10GBASE-SW光マルチモード300m
10GBASE-LW光シングルモード10km
10GBASE-EW光シングルモード40km
10GBASE-X10GBASE-LX4光シングルモード10km
10GBASE-CX4対2芯銅線 (CX4) 同軸15m
25GBASE-T25GbpsSTP(4対 カテゴリ CAT7)30m
40GBASE-T40GbpsSTP(4対 カテゴリ CAT7)30m

ファストイーサネット

ファストイーサネットとは、100Mbps の通信に対応した規格 (100BASE-TX) のことです。

ファストイーサネットの特徴は以下のとおりです。

  • イーサネット規格から同軸ケーブルを除外
  • 全二重通信に対応

現在では、ギガビットイーサネット、10 ギガビットイーサネット、100 ギガビットイーサネット...と、早くなってます。

カテゴリ

LAN ケーブル (ツイストペアケーブル) は、イーサネット規格名とは別に、カテゴリという規格でも分類されます。

カテゴリイーサネット規格名伝送速度伝送周波数帯域シールド距離
CAT1無し (電話線)20kbps100kHz任意-
CAT21BASE54Mbps1MHz任意-
CAT310BASE-T
10BASE-T2
10BASE-T4
10Mbps16MHz任意100m
CAT410BASE-T416Mbps20MHz任意100m
CAT5100BASE-TX
1000BASE-T
100Mbps100MHz任意100m
CAT5e100BASE-TX
1000BASE-T
1Gbps100MHz任意100m
CAT65GBASE-T
10GBASE-TX
1Gbps or 10Gbps250MHz任意55m/
100m
CAT6a10GBASE-T10Gbps500MHzF/UTP※100m
CAT710GBASE-T
25GBASE-T
10Gbps600MHzS/FTP※50m
CAT7a-40Gbps or 100Gbps1000MHzS/FTP※15m
CAT840G-BASE-T40Gbps2000MHzF/UTP※30m
https://ja.wikipedia.org/wiki/
※被覆なしを「U」、細い金属線を網状に編んだ組編シールドを「S」、金属薄膜(フォイル)による被覆を「F」
例:S/FTP = Shielded and Foiled Twisted Pair
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物理層のネットワーク機器

イーサネットの物理層で利用するネットワーク機器は以下の2つです。

  • リピーター
  • リピーターハブ

リピーター

リピーターとは、以下の機能を持つ機器です。
・電気信号を「増幅」して、ケーブルの規格の使用可能距離を伸ばす
・電気信号を「整形」して、ノイズで崩れた電気信号を元に戻す
https://www.infraexpert.com/study/ethernet6.html

リピーターハブ

リピーターハブとは、ポート(ケーブルの差し込み口)が複数あるリピーターです。
https://www.infraexpert.com/study/ethernet6.html

カスケード接続

カスケード接続とは、リピーター (リピーターハブ) 同士を繋ぐことです。
http://www5e.biglobe.ne.jp/aji/3min/10.html

カスケード接続は10BASE-Tなら4段、100BASE-Tなら2段までの制約があります。

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ネットワークトポロジー

ネットワークトポロジーネットワークトポロジーとは、機器とケーブルの配置のことです。

なお、ネットワークトポロジーには次の2種類があります。

  • 物理トポロジー: 物理的な配線のこと
  • 論理トポロジー: データの流れのこと

ネットワークトポロジーの種類

ネットワークトポロジーは次の5つの種類があります。

  • バス型トポロジー (物理トポロジーではオワコン。論理トポロジーでは主流)
  • リング型トポロジー(オワコン)
  • スター型トポロジー(現在の LAN の主流)
  • ツリー型トポロジー
  • メッシュ型トポロジー(対障害性あり)

イーサネットで利用可能なトポロジーは「バス型トポロジー」と「スター型トポロジー」です。

そのため、ここでは「バス型トポロジー」と「スター型トポロジー」について解説します。
(※その他のトポロジーの解説はこちらこちら)

バス型トポロジー

バス型トポロジーとは、同軸ケーブルを利用する以下の形のトポロジーです。
http://www.aim-ele.co.jp/tech/metal-tech10/

現在 LAN ケーブルにツイストペアケーブルを利用するため使われてません。

スター型トポロジー

スター型トポロジーーとは、リピーターハブや L2 スイッチに複数のコンピュータを繋げた以下の形のトポロジーです。

最後に

OSI 参照モデルの1層目の物理層に関する説明は以上となります。

OSI 参照モデルの別層について

別の階層に関する記事は以下です。

OSI 参照モデル

参考記事

3 Minutes Networking
ネットワークエンジニアとして
ネットワークエンジニアに必要なネットワーク技術とCisco・Juniper・F5製品の技術解説。NWエンジニアの仕事内容や年収を紹介。ネットワークスペシャリスト、CCNA/CCNP/CCIEの情報発信。
無線LANの規格まとめ(IEEE802.11)
Wi-Fiの規格「IEEE 802.11」全種類を総チェック!
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